こんにちは。
事務局の櫻井正則が担当します、第26回目の事務局通信。
最後までご一読頂ければ幸いです。
※事務局通信は、キャリアチェンジサロンのセミナーやメールプログラムにお申込みいただいた方にキャリア関連のことやキャリアチェンジサロンの様子についてお送りしております。
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「 伴走者 」
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東京パラリンピックが9月5日の閉会式をもって、13日間の死闘に幕を閉じました。
本当に多くのパラアスリートたちのその挑戦の姿に、多くの人が心を打たれたと思います。
私もいくつかの競技をテレビ観戦でき、最後まで諦めないその姿に惜しみ無く拍手を送りました。
それはそれは沢山のドラマがあって、どれが良いとかどうとか言えないほど話題がありましたが、その中でも私だけではなく、多くの方がきっと幸せな気分になれたエピソードがありました。
陸上競技の中で視覚障がいのアスリートが走るときに、一緒に走るガイドランナーと呼ばれる伴走者がいます。
伴走者は選手とひも(ガイドロープ)を握り合い、声をかけながら選手を誘導します。高い走力が必要なだけではなく、選手を安全に最後まで導くことが大きな役割と言えます。
テレビでも連日報道された、盲目のアスリートとそれを支えるガイドランナーの以下のエピソード。
「陸上女子200メートル、視覚障害のクラスに出場したペレイラ セメド選手がレースを終えた直後、伴走者のマヌエル アントニオ・バス ダ ベイガさんがセメド選手の手を取ると、みずからのひざを立ててプロポーズ。
そして持っていた小箱から指輪を取り出して、セメド選手の左手の薬指にはめると、スタジアムから祝福の拍手と歓声が起こり、2人は強く抱き合っていました。」
という、なんとも微笑ましいエピソードです。
私はこの報道を見ていてとある記憶が蘇ってきましたので、この通信の場をお借りしてご紹介したいと思います。
私の知り合いに精神障がい者のカップルがいます。彼らとはもう20年以上のお付き合いになりますが、知り合った当時2人は20代はじめ。
私が勤めていた作業所で2人は知り合い、お付き合いを始めました。
男性はシャイな方で、女性は誰にでも気軽に話しかける社交的な方で、何処にでもいる普通のカップルでした。
それが大きく変わり始めたのは、2人が結婚を意識し始めた頃だったと思います。
いつも楽しそうにしていた2人が、ずっと暗そうな感じに見えたので、何気なく彼に尋ねてみると、結婚の事を両親に相談したら、大反対されたとの返事。
結婚に反対はつきものですが、その理由が一般的なものとはちょっと違います。
それは、2人共に障がいを抱えており、結婚して子供が産まれれば、かなりの確率で障がいを抱える子供が産まれる。それは誰にとっても幸せなことでは無い。
との反対理由でした。
それを聞いて私も次の言葉が出てきませんでした。安直に、そんなの産まれてきてみなければ分からない、などととても言えません。
例えば一卵性双生児(遺伝情報が全く同じ)の片方が統合失調症を発症した場合、他方が発症する割合は約50%であるといわれているそうです。
もし遺伝だけで決まるのであれば、一卵性双生児の片方が発症すれば他方も100%発症するはずです。遺伝が影響していることは確かですが、環境やストレスなど、後天的な要素も影響していることが分かります。
しかしそれもただの理屈。
ご両親の心配は、共感できて余りあるものがあります。
顔や身長、スタイルや性格、年収や学歴が反対の理由なら私は2人に対して、「そんなのは2人の愛があれば乗り越えられるよ!」と息巻いて言えた事でしょう。
世の中には乗り越えられない壁もあるのだと、私自身意気消沈しました。
さて、それからの2人はどうなったか?
皆さん、ちょっと想像してみて下さい。
彼らは今日この文章を皆さんが読んでいるこの時も、20代の頃のまま変わらずにお付き合いを続けています。
結婚は諦めた様です。
結婚は叶わないと思った彼らは、2人で生きた証を作るために、誰の力も借りずに富士山に登頂することにしました。
いきなり最高峰に登るわけにはいかないので、2人で計画をたて、低い山から順番に身体を慣らしていき、数年がかりでついに2人で頂上からご来光を眺めたのです。
その後2人だけでタキシードとウェディングドレスを着て、写真館にお願いして結婚式の写真を撮りました。
参列者は誰も居ません。
一生で1度、2人だけの結婚の証をフォトグラフに納めました。
それを2人が嬉しそうに私に見せてくれた時は、図らずも涙ぐんでしまいました。
世の中には超えられない壁はある。
あるけど、人生の伴走者がいれば、2人で壁を登れば良い。
遠回りしても、時にはつまずいても、2人の手に巻かれたガイドロープはきっと外れる事はないでしょう。
そう願いながら、日曜日はパラリンピックの閉会式の余韻に浸っていました。
最後に。
選手とガイドランナーを繋ぐこのガイドロープのことを、日本では「きずな」と呼ぶそうです。
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キャリアチェンジサロン運営事務局
櫻井 正則(さくらい まさのり)
20代から演劇の作・演出家として何十本もの創作劇を上演。
30歳の時に、精神障がい者の社会復帰施設での彼らとの出会いから、こんな世界があるのかと目覚め、以後その道に進み、仕事の傍ら10年間東京都での「心の健康フェスティバル」総合演出を担当。
6年間地域のエッセンシャルワーカーの若手の繋がりを主催。
50歳で精神障がい者に特化のe-ラーニングを事業としたNPO法人「Leaves of Grass」を立ち上げる。
2020年12月に60歳で職場を定年退職。
2021年2月にITアプリを導入してメンタルヘルスケアを支援する一般社団法人「リプラボ」を立ち上げる。
その他に狛江市のNPO法人「狛江さつき会」の理事も兼務。
現在調布の自宅と埼玉県小川町の事務所を行ったり来たりの生活で、小川町では日本ミツバチのチーズケーキ販売の事業を展開すると同時に、障がい者の方に活版印刷を教えて、ユネスコ無形文化遺産の和紙で名刺づくりを始めている。
雇用環境整備士資格(Ⅱ種)取得
■NPO法人Leavess of Grass
法人URL:%url5%(http://lognet.jp/)
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